大人ピンクで甘さ控えめのハンサム気分
ツイードに色のバリエーションが増えてきました。ジャケットに正統派のイメージを宿しているので、ピンク系の甘めカラーでもエレガンスや気品をキープしやすいのは、ツイードならでの長所です。
柄プリントのTシャツに、ノーカラーのツイードジャケットを重ねました。フランスの【MALHIA KENT(マリア ケント)】社のファンシーなツィードが上質感を際立てています。コーラルピンクがソフトなムード。ボトムスもピンクのパンツですが、ハンサムなシルエットが効いて、スタイリッシュな雰囲気に。ピンクをクールに着こなしつつ、レディー感を引き立てるバランスが絶妙です。
デニムを相棒に、気負わないノーブル見え
クロップド丈のジャケットはトレンドアイテムとして支持率が高まるばかり。ツイード仕立てのステンカラージャケットなら、コンパクトなシルエットでも、上品テイストが薫ります。むしろ小ぶりなサイズで華奢感を引き出す着方が選べそうです。
フランスのファブリックメーカー【CLARENSON(クラレンソン)】社のツイード生地を使用。ボトムスはセンタープレスが効いたきれいめのデニムパンツでシャープに着こなしています。ピンクのストラップヒールサンダルで足元にフェミニン感を添えて。大人のこなれたノーブルカジュアルな着こなしに導くスタイリングは、デニムとツイードという異なる風合いの上下マッチングがポイントです。
変化球セットアップで凜としたロマンティックに
ジャケットの印象が強かったツイードですが、人気を追い風に、様々なアイテムに落とし込まれるようになりました。たとえば、ジレ。ボトムスも共生地で仕立てた変化球セットアップは軽やかで涼やかです。
マリアケント社のコーラルピンクのツイードで大人かわいい仕上がりに。キュロットとの組み合わせで鮮度アップ。ジレの凜としたムードを生かしつつ、ロマンティックなフリルブラウスとのレイヤードで装いにコントラストを効かせています。レイヤードルックを格上げしたい場合、ツイードのジレは1枚あると重宝すること間違いなしです。
「華やか × きちんと」が融合 オフィシャルやパーティにも
ツイードはセットアップで着ると、格上ムードが一段と強まります。プレーンなシャツやブラウスに重ねるだけで、きちんと感がしっかり。少しかしこまった場面でも気後れせずに済みます。
裾広がりのペプラムシルエットのビスチェ風チュニックには落ち着きと愛らしさが同居。フランスの【Tournier(トゥルニエ)】社の複雑な色と意匠系モチーフが入ったツイードを採用。パンツのセットアップで、ミックスチェック柄の穏やかテイストが際立ちました。クリーンな白シャツの上に重ねて、きちんと感と華やぎを融合。セレモニーやパーティなどのシーンでも活躍してもらえそうです。
異素材ミックスで奥深いレディーライクに
ジャンパースカートは復活がめざましいアイテムです。どこか懐かしげなフォルムが持ち味だけに、オーセンティックなマリア ケント社のツイード生地とは好相性。彩度の高い鮮やかなブルー系のチェック柄という、今年らしいトレンドカラーのツイードがマリン気分を連れてきました。
黒系のレース地ブラウスはほんのりセンシュアルなムード。異素材ミックスのコントラストがレイヤードルックを趣深く見せています。相反する素材を組み合わせるだけでコーディネートに奥行きが出るから、異素材レイヤードは試しがいあり。ストラップシューズでいっそうレディーライク感が高まっています。
極上ツイードがいざなう、デイリークローズの新境地
ファッションを通して新たなエレガンスを提案している「アナイ」は長年のファンが多いブランドです。素材やカッティング、着心地にこだわり、上質でありながら、しなやかに調和する服は、洗練を好む女性から支持を受け続けています。お仕事シーンに重宝な点でも貴重な存在です。
2024年春夏コレクションのテーマは「French Escape」。貴婦人たちの装いを現代に再解釈したツイード・セットアップやブラウスで映画『マリー・アントワネット』の優雅な世界の追体験に誘います。優しいマカロンカラーやハンドクラフト、リゾートルックが気持ちを弾ませてくれそうです。
ツイード特有の格上感は、デイリークローズから別の表情を引き出します。なかでもそれぞれに個性を持つ、フランスのツイードメーカーは格別です。あえてジーンズのような普段着やカジュアルウエアと交わらせることによって、気品と着心地を兼ね備えた新境地に踏み込めるから、この春夏に試してみてはいかがでしょう。
ファッションジャーナリスト 宮田理江