今年はデニムアイテムが世界的に大流行。高級ブランドやハイエンドなデザイナーブランドたちもこぞって、デニムウェアを見直し、新商品が広がっています。そんな中、ジーンズ・デニムと言えばすぐに名前が浮かぶブランドのひとつが、フランスの【A.P.C.(アー・ペー・セー)】。時代を超えて愛され続けるA.P.C.のデニムも、世界的ブームの中で改めて見直されています。デニムの年を彩るお手本のようなデザイン・スタイルがいっぱい。そこで、A.P.C2023-24年秋冬コレクションから今シーズンらしいスタイリングのポイントを解説します。

チャーミングシックな「デニムonデニム」

A.P.C. 2023-24年秋冬コレクション

今回のコレクションではパリの高校生とコラボレーションしています。今の高校生らしい感覚がリアルに写し込まれているわけです。スクールガールの好むフレンチ流プレッピーのようなスタイリングが参考になります。ノンウォッシュデニムのジャケットとミニスカートのセットアップは色が濃いので、落ち着いた雰囲気。若々しいミニ丈にスクールガールっぽさが出ています。ソックスとメンズ風革靴にもスクールムードを漂わせながら、シックにアレンジ。ほのかなパンク感を秘めた、単なる「かわいい」で終わらない絶妙のさじ加減です。

「デニムonデニム」でこなれクラシック

A.P.C. 2023-24年秋冬コレクション

デニムを上下でまとう「デニムonデニム」をモダンに着こなすコツがあります。ジャケットの代わりにシャツを選べば、ぐっとソフトな表情に。「つなぎ」のようなムードが程よいジェンダーレスコーデにも導いてくれます。シャツの両袖を無造作な感じでひじの手前でまくるのがこなれ感を引き出すコツ。シャツの正面ボタンを大胆に開けて、Vラインの肌見せで色香を演出。襟を立たせて、ちょっとだけ「強め」イメージをプラス。ベルトでウエストマークした、きちんと感の漂うデニムルックは秋からのクラシックトレンドにマッチします。

別ムードのボトムスで「ずらし」を演出

A.P.C. 2023-24年秋冬コレクション

デニムシャツはデニム以外の素材と組み合わせると、別の表情を引き出せます。あえて雰囲気をずらした感じのボトムスと引き合わせて、新たな相性を見つけ出すアレンジを試してみましょう。洗い加工を掛けたデニムシャツはユーズド風味を帯びるので、端正な表情のボトムスとのコントラストが際立ちます。タック入りのスラックスとのマリアージュで、ムードを上下でアンバランス気味に。上半身のカジュアル感とパンツの落ち着きムードが適度にずれていて、こなれ感が生まれました。真っ赤なリップがフェミニンな差し色効果を発揮しています。

デニムスカートはレイヤードが決め手

A.P.C. 2023-24年秋冬コレクション

ラフでカジュアルな生地感が日常使いに好都合のデニムスカート。ふんわりしたシルエットが優しげムードを演出。レイヤードを取り入れれば、装いに動きやスパイスが加わります。Tシャツやシャツを使ったプレイフルでリラックスした雰囲気に整う着こなしです。A.P.C.のファウンダーであるジャン・トゥイトゥとジュディスの娘であるリリーさんがモデルとしてランウェイに登場。彼女は本物の高校生だけに、リアル感の高いコーデを披露。デニムスカートに長袖と半袖のTシャツをレイヤード。腰にチェック柄のシャツを巻いて、差し色とウエストマークに役立てました。シルバーのネックレスとロングブーツで強さも添えています。

デニムを半額で新品と交換してもらえる「バトラープログラム」とは?

バトラープログラム

ファッションの世界でもサステナビリティが重視されるようになる中、早くから取り組んできたのが「A.P.C.」。たとえば、穿き古したA.P.C.のローデニムをショップに持ち込めば、半額で新しいローデニムと交換してもらえる「バトラープログラム」のサービスはその一例(引き取り条件有)。A.P.C.のワークショップで洗濯や修理を受けたデニムウエアは元の所有者のイニシャルを記したうえで再びショップに登場します。愛着を持てるようなデニムの育て方を魅力的な方法で提案しています。

デニムウエアは身近な存在ですが、身近すぎるせいもあってか、割と「ありのまま」に着てしまいがちなことも。でも、ちょっとしたアレンジを加えるだけで、キュートにもスタイリッシュにも着こなせる重宝アイテムです。ずっと長く着続けられるタイムレスなデニムは頼もしいロングライフ・ウエア。今回紹介したA.P.C.のスタイリングを参考に、秋からのデニム着こなしでレパートリーを増やしてみてくださいね。

(画像協力)
A.P.C.

ファッションジャーナリスト 宮田理江