式で着たウェディングドレスを黒く染めて長く愛用できるように
ウェディングドレスと聞いてイメージするのは、白く華やかなデザインで貸衣装……ではないでしょうか。水戸守さんがデザインするウェディングドレスは、まずその思い込みを取り払います。その一つが色。白と同様に大事な色として黒いドレスも揃え、さらに買い取りでもあるため白いドレスでも式後に黒く染めることができます。
「せっかくのウェディングドレス、1回きりしか着ないなんてもったいない。黒く染めたり、丈を短くしたりして、式以降の冠婚葬祭や大切な記念日にも対応できる提案をしています。シルク100%の製品を染め直しするのはすごく大変で、こんな提案しているのは、おそらく【サボラミ】だけ。染工場の方には『こんな難しいこと、真似するブランドはきっと出てこないよ』と言われています(笑)。染めだけでなく、製品染めをした際にできるしわをきれいにプレスするのも技術が必要で、それができる素晴らしい工場さんに助けられて実現できました」(水戸守さん)
式の後まで考え抜かれているからこそ、ドレスのデザインは華美すぎず、かしこまった場にふさわしいのか、ディテール1つ1つまで妥協せずにデザインされています。さらにドレスもいわゆるワンピースだけでなく、ジャンプスーツやトップスとスカートがセパレートできるドレスなどバリエーションを揃えているのも特徴です。
「ザ・ウェディングなホテルの披露宴だけでなく、リゾートにレストラン、ガーデンなど、一口にパーティと言ってもいろんなシチュエーションがあります。でも個人的にはダンスホールやスタジオなど、会場はもっと幅があっていいし、広がってほしい。そんな思いも込めて様々な会場に合うラインナップを心がけています」(水戸守さん)
ウェディングドレスのセオリーにとらわれないのは素材にも。品質のいい素敵な素材を使いたいとの思いから、縮緬(ちりめん)などの着物によく使われる素材をはじめ、水戸守さんが満足のいく伝統工芸のマテリアルを採用しています。
洗練されたデザインと素材により、【サボラミ】のドレスに袖を通した40代の女性からこんな感想をもらったそう。
「その方は『この年齢でウェディングドレスを着てもいいのかな』と、迷いがありました。でもご試着いただくとよくお似合いで、彼女の気持ちが前向きになるお手伝いができたのかなって。大人の女性だけでなく、プリンセス願望のない女性とか、年齢問わず様々な女性が着られるドレスを提案したいと思っていたので、それが叶って嬉しかったですね」(水戸守さん)
デビューコレクションで揃えるドレスは11型。しばらくは型を増やすさず、このラインナップを続ける予定とのこと。
「ウェディングは一生に一度の大切なライフイベント。頻繁に入れ替えて、着たいタイミングで着たいドレスがないようにとはしたくないんです。ただトレンドに合わせ、新しい素材やデザインに変更するなどしてブラッシュアップはしていきます」(水戸守さん)
経験値の高い列席者も満足してもらえる洗練されたパーティを
【サボラミ】が手掛けるのはドレスだけではありません。会場選定から招待状、食事、装花、花嫁のヘアメイクアップアーティスト、フォトグラファーの起用といったパーティのディレクションも行っています。
「会場とドレスが合っていないとか、したいことを全部詰め込んだ結果トーン&マナーが合っていないとか。堅苦しくしたいわけではないんですが、特に年齢を重ねてからの式の場合、列席者もたくさんの結婚式に出席された経験値の高い人が多いので、ちゃんとした式になるようにドレスだけでなく、トータルでお手伝いしたいなと思って」(水戸守さん)
ドレスと同様、パーティもシンプルを心がけています。これには39歳で挙式をした水戸守さんの経験が大いに生きています。
「年齢を重ねたせいか、私はパーティでこだわりたい部分とそうでない部分が明確にありました。美味しいワインと食事は妥協できないけれど、仰々しいテーブルコーディネートはいらないなとか」(水戸守さん)
こだわりたい部分はとことんこだわりたい。それは会場のプランを鵜呑みにするだけでは実現しない、と水戸守さんは身を持って痛感します。
「私の場合、ワインが譲れませんでした。パーティで出す料理を自身で再現して会場が提案してくれたワインをペアリングまでしたものの、どうしても満足できなかったんです」(水戸守さん)
じっくりヒアリングして、お客様の譲れないこと、なくてもいいものを取捨選択しながら、様々なパターンを提案できるウェディングのブランドを立ち上げれば、満足のいくパーティをできる人が増えるのでは。これが【サボラミ】を立ち上げた大きな動機になっています。
「私の周囲には入籍はしたけれど、式をしていない人が何人もいます。コロナ禍もありましたが、花婿が乗り気ではないパターンもたくさんあって。【サボラミ】の式はデコラティブじゃないので、目立つのが好きじゃない男性も共感してもらえるような食事、お酒、音楽を提案できると信じています」(水戸守さん)
余計なことをせずにシンプルを追求していく。そうするとこで、式に積極的ではない花婿の意識も変えられるかもしれません。
ウェディング以外の視点を持った一流のクリエイターが招待状や撮影を手掛ける
招待者へ式のイメージを印象づける招待状や席次表、一生の思い出となる撮影といったクリエイティブな部分。ここもウェディングならではの形式が決まっていることが多く、自由度は低め。自力で探そうにも、クリエイターの伝手がない人のほうが多いでしょう。【サボラミ】では長年アパレル業界で働いてきた水戸守さんの人脈を生かし、広告などの業界の第一線で活躍する、ウェディング以外の視点を持ったクリエイターを起用しています。
「ブランドのロゴデザインはアートディレクターの平林奈緒美さんが手掛けてくださいました。フォトグラファーもシチュエーションに合わせて、ヘアメイクアップアーティストもドレスに合わせて最適な人を提案します」(水戸守さん)
結婚式はゴールではなく、スタート。花嫁だけでなく参列者のその後の生活も考えてディレクション
「結婚式はして終わりではなく、した後が大切だと考えています。パーティで美味しい料理に出合えれば、その後もお式で着たドレスを黒く染めたものを着用してそのレストランに通う、素敵な装花を手掛けたお花屋さんに通う。そんな風にその後の生活が豊かになるウェディングパーティを目指しています」(水戸守さん)
水戸守さんのこの一言が【サボラミ】を象徴しています。結婚式をゴールではなく、スタートと考えるからこそ、花嫁を主役として輝かせる従来のウェディングとは違い、花嫁だけでなく参列者のその後の生活の豊かさにもこだわるのでしょう。
ウェディングを通じて人生を豊かにしてほしいと願う水戸守さんにはこんな構想もあります。
「せっかくドレスを買っても、おめかししていく場がないとの声をたくさん頂戴しています。いずれ【サボラミ】のドレスを買ってくれた人だけが参加できるイベントを開催するのが当面の目標。価値観が近い人の集まりになるだろうから、そこからまた新しいコミュニティが生まれたらいいな、って思いますね」(水戸守さん)
【サボラミ】ドレスオーダーイベント
開催日時/2023年8月25日(金)14:00〜19:00、26日(土)11:00〜19:00、27日(日)11:00〜19:00、9月2日(土)11:00〜19:00、3日(日)11:00〜19:00、4日(月)14:00〜19:00※8月25日、9月4日(月)のみ14時スタート
場所/Experiment 東京都渋谷区神南 1-9-7 丸栄ビル 101
問い合わせ/info@saborami.jp
※価格はすべて税込みです
Senior Writer:津島千佳