匠からサブカルチャーまで。振り幅広く日本の魅力を発信する【BEAMS JAPAN】
『日本の銘品』『日本の洋服』『日本のセンス』『日本のポップカルチャー』『日本のクラフトとアートギャラリー』『日本の洋食』の5つのテーマを持ち、地方の魅力にも光を当てる【BEAMS JAPAN】。【ビームス】代表取締役社長である設楽洋さんの中では早い段階から【BEAMS JAPAN】の構想があったそう。
「海外出張で出合った素晴らしいシルクが、実は古い日本のものだった。そんなことが設楽にはよくあったそうです。【ビームス】は世界中のいいモノ、コトを紹介する会社ではありますが、日本のよさを世界に発信したいと設楽の中で思いが強くなったことが【BEAMS JAPAN】誕生のきっかけです」(佐野さん)
「当初から設楽には日本のポップカルチャーをしっかり紹介したい思いがあり、ずっと『匠からサブカルチャーまで網羅した店にしたい』と言っていて。その振り幅の広さは【ビームス】らしいチャレンジだし、バランスよく配置できるとも考えていました。それをコンセプトに、総合アドバイザーの小山薫堂さんと話し合う中で、残りの柱も決まっていきました」(佐野さん)
振り幅の広さを体現するのが、一号店である新宿の店舗。フロアごとにコンセプトが異なり、多面的に日本の魅力を発信する百貨店のような楽しさがあります。
「4階を『日本のポップカルチャー』にして、そこを軸に構成することに決めました。洋服や雑貨はもちろん、食も絶対に外せない要素だと思っていて。食は地域の魅力を最も表すものじゃないですか。例えば青森のりんご。りんごは食べるだけでなく、りんごの木が木工品になったりして青森の産業を支えています。地域の人たちの生活を支えてきた食も欠かせないもので、日本文化を紹介するうえで外せません。そんな思いから地下1階では『日光金谷ホテル クラフトグリル』さんに『日本の洋食』を提供してもらっています」(佐野さん)
現地直送の源泉足湯。ファッションの枠を超えた地方との取り組みも
地方とのプロジェクトにも熱心で、数多くの案件に携わっています。最初に取り組んだのは、2016年9月に神戸市からの依頼による『BEAMS EYE on KOBE』。神戸の地場産業とのコラボレーションアイテムの企画・販売、【BEAMS JAPAN】の視点で選んだ神戸の飲食店や洋服屋を神戸にまつわるエッセイとともに編んだガイドブックを作成しています。
この協業で佐野さんの印象に残っているのが、ゴーフルで有名な【神戸風月堂】。
「コラボをするとなれば、まず看板商品であるゴーフルのニューフレーバーを出したい気持ちって、みんなあると思うんです。でも長年こだわって作られていて評価を積み上げてきた伝統ある商品に、外部が無理を通すような行いを自分達はしたくなかったんです。だからゴーフルを持ち運ぶバッグを提案しました。バッグも地元のメーカーに作ってもらって、地場×地場で商品を作ることができました」(佐野さん)
【BEAMS JAPAN】は立ち上げ当初から、コラボレーションやプロデュースなど発想力や企画力で勝負する領域の割合を高めたいと考えていました。それを象徴するプロジェクトが2016年に大分県別府市とコラボレーションした『BEAMS EYE on BEPPU』。新宿の店舗で開催したイベントで、11月の毎週末に別府市から運ばれた源泉100%掛け流しの『ビームスの足湯』を実施しました。
「アイデアを出す中で、単純に『別府といえば温泉だよね』となりまして(笑)。かなり反響も大きかったですし、【BEAMS JAPAN】はここまで振り切っていいんだって、一種の指針にもなりました」(佐野さん)
SeniorWriter:津島千佳