SDGsは後付け。まずは「本当にいいものを手頃な価格で」からスタート
もともと商社の繊維事業部に勤めていた澤木雄太郎さんと、アメリカのアパレルブランドで経験を積んでいた小池勇太さんが、ニューヨークで出会ったのがブランドのはじまり。帰国後、澤木さんの独立を機に一緒に【RYE TENDER】を立ち上げました。
長年、アパレルブランドのOEMを手掛けていた澤木さんは、自身が現場で見てきた大量の残糸を活かせないかとアップサイクル・プロジェクトを考案。ですが「アップサイクルについては、実は後付けなんです」と澤木さんは明かします。「余り物を使った商品を安く売ろう、ではなく、品質の良いものを作りたいというシンプルな思いからスタートしています。そのうえで、残糸がもったいないのでうまく再利用できないかと。残糸だけでは品質やラインナップに魅力が出なかったり、極端に残糸量が少なかったりすれば、工場さんが負担にならない総量まで買い足すこともあります」。
最大の魅力はシンプルでいて絶妙な好発色のニット。着心地も抜群!
ニットは、ユニセックスで着られるシンプルなデザイン。絶妙なドロップショルダーやボックスシルエットが今っぽいムードに仕上がります。肌に吸い付くようなとろみのあるカシミヤやちくちくしないウールなど、上質な着心地も病みつきに。現在の販路は自社ECサイトが中心。シーズンの立ち上がりに開催するポップアップイベントでは、家族やカップルでシェアする姿も多く見られるそう。「糸の供給量で変動しますが、各アイテム5〜8色揃えています」と小池さん。今季はトレンドのグリーンやダスティブルーがよく売れているそうです。
環境に配慮していて品質も良い“期待を上回る”ECブランドを目指して
商品価格は1万5000円から2万円台が主流の、手頃な価格帯。ここにも二人のこだわりが詰まっています。「実店舗がなくECのみで販売しているからこそ、商品が届いてガッカリされたくない。『価格に対して素材の風合いが良い』や『画像よりも実物のほうが色がきれい』など、予想以上のクオリティに満足したという声を多くいただいています」。
二人が目指すのは、“期待値を超えるファッションEC”。前職の経験を活かし、生産から販売まで一貫して目を通しワンストップで行い、品質の良さを追求しています。残糸を使うことでコストを抑え、手の届きやすい価格を維持。とはいえ、たとえ多く余っている糸でもダウングレードだったら、商品化を諦めることもあるそう。「商品のデザインが気に入って、価格も自分にちょうどよくて。そこに環境に配慮された生産背景があれば、納得できて購入しますよね。まずは商品自体に魅力がないと。“サステナブルであること”は、必ずしも購入の第一優先にはならないと思っています」。妥協しないモノづくりに裏打ちされたシンプルで価値のある商品は、“いいものを長く着る”というエシカルなアクションにもつながりますね。
【RYE TENDER】ベストセラーの3モデルをチェック!
昨年のブランド立ち上がりから完売が相次ぐベストセラーをご紹介します。まずは一番ベーシックな定番モデル“FRANKLIN SWEATER”。メンズライクなシルエットでいて柔らかくソフトな色合いのカラーニット。きめ細やかなオーストラリアメリノウールとカシミヤのブレンド素材。価格は1万7000円。
続いては“MOORE SWEATER”。ゆとりのある身幅のコクーンシルエットやボリューム袖、ほんのり前後差をつけた裾など、トレンド感のあるデザインが特徴。体が泳ぐオーバーサイズなので、嬉しい華奢見え効果も期待できそう。素材はウールカシミヤで、価格は1万7000円。
ふっくら地厚なカーディガンの“HUDSON CARDIGAN”は、浅めのVネックラインがスタイリッシュな印象。軽くてあたたかく、ジャケット感覚で羽織れる上品なシルエットが人気。素材はウールカシミヤで、価格は1万9000円。
表地ニット&裏地コットンの新素材セットアップで新たな挑戦!
先月リリースした新作のセットアップ。表地にハイゲージウール、裏地にコットンを掛け合わせることで、スウェットのようなイージーな着心地でいて上品な雰囲気に。「あえて自社ECでは販売せず、実験的にクラウドファンデイングサイトのキャンプファイヤーでプロジェクト化しました」。目標金額の50万円をすぐに達成し、手応えは十分。「販路を広げることで、ファッションコンシャスではない人たちにももっとブランドのことを知ってもらえたら。今後は主要都市だけでなく、地方でもポップアップイベントを開きたいですね。在庫など課題はたくさんありますが、セールは行いません。サステナブルに縛られてがんじがらめになっては本末転倒なので、シンプルに考えて展開していきたいですね」。
【RYE TENDER】公式サイト
※価格はすべて税込みです。
Senior Writer : Chikako Ichinoi