ftn編集部が今、ファッション・トレンド業界で気になるキーパーソンをクローズアップする「it Person diary」。毎回ファッション・トレンドの世界の“時の人の素顔とビジョン”を覗きます。今回は今ファッションの世界でもっとも影響力のあるスタイリストのひとり。そしてファッションアイコンでもある小山田早織さん。彼女が大事にしていること、ファッションのこだわり、そしてこれからのトレンドキーワードも教えてもらいました。
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学校の先生だったかも

ftn編集部:まずは、改めて、今のお仕事をするきっかけを教えてください。

小山田さん:私はもともとは学校の先生になりたかったんです。「人材育成」に興味があり、中学社会・高校地歴公民の教員免許を持っています。先生になるために入学した立教大学の入学式でファッション誌ViViの読者モデルにスカウトされたことが、この世界に飛び込む大元のきっかけです。

学生時代は、サークルに所属したり、コンビニや飲食店など様々なアルバイトをしながら、自分の本当に好きなことを探していました。読者モデルの活動もその一環。そんな読者モデルの活動を通して、裏方のライターさんやスタイリストさんのお仕事風景を間近で見れ、どんどんファッションやトレンドを発信する側の世界にのめり込みましたね。

スタイリストで一流になりたい!って

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小山田さん:ある時、「ViVi読者モデルとコラボでデニムを作ります」という企画があり、その出会いをきっかけに岡山のデニムOEMの会社からデニムのデザインをやってみないかとお声がけをいただきました。当時、20歳の大学生だった私は、失うものはない!と決意し、週2〜3の日帰り岡山通いをしていました。岡山で出会ったデニム職人達の命を削るほどの仕事ぶりに感動し、必死に食らいついて勉強していましたね。今考えると当たり前ですが、東京から来たど素人の私は、職人の方々には、到底受け入れて頂けなかったので。

この時、ゼロからイチを生み出す一流職人のスタンスに触れ、いつか自分が何かで一流になれたときに、「またちゃんとここで仕事がしたい。」そう思うようになりました。その際に、「スタイリストとして一流を目指す!」と決意しました。その後、アシスタントを探しているスタイリストの方を紹介して頂き、大学4年生からスタイリストアシスタントとしてキャリアをスタートさせました。

ftn編集部:読者モデルからスタイリスト見習いって珍しいパターンですよね?

小山田さん:当時は読者モデル出身だったからか、大して大変な仕事もしていないだろうと言われていましたね。正直、実際は結構きつかったです。アシスタントを始めたのは大学4年の時だったので周りはみんな卒業旅行などではじけていました。それを横目に、アシスタントの仕事と教職の単位取得で卒業まで寝る間もない感じの生活でした。なので学校ではちょっと浮いていたと思います。しかし、固い決意とともに「自分で入ったこの道で一流になる!」と決めてたので後悔はなかったですし、がむしゃらでした。

ファッション誌の表紙のスタイリングを手掛けるまで辞めない。

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ftn編集部:小山田さんが考える一流のスタイリストってどういうものだったのですか?

小山田さん:まずは分かりやすく、「誰もが知っている日本のファッション誌の表紙のスタイリングをやること」だと思ってました。なので、まずはその時スタイリストアシスタントをしていたCanCamの表紙のスタイリングを手掛けるまでは絶対に辞めないと自分を奮い立たせてました。

ftn編集部:雑誌の表紙のスタイリングの仕事は、ご自身が想像していたよりも早く訪れたのですか?

小山田さん:いやいや、全然そんなことはないです。独立後すぐは、「着回し企画」のKEYアイテムすら決められなかったり、もっと師匠の仕事を見ておけば良かったと後悔の日々でした。何度も編集部のコーディネートルームで、たくさんの服に囲まれて泣いてましたね。

ftn編集部:ご自身で納得できるスタイリングや仕事をできたのはいつですか?

小山田さん:独立して2〜3年後に、違う雑誌の編集部の方がスタイリングを評価してくれたことをきっかけに自分でも納得感のあるスタイリングを組めるようになっていきました。見てくれてる人がいるという実感は大きな収穫でした。その後、読者が選ぶ好きなコーデ1位を取れるようになって嬉しかったです。

すべては見る人、着る人のため

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ftn編集部:スタイリストの仕事をするときに大事にしていることはなんですか?

小山田さん:自分の表現や業界の事情よりもまず、読者やこのスタイリングを見た方や実際に着た方。その人たちがどう感じるか、相手の立場に立つことが大事だと思っています。一方的な提案よりも、私が好きなスタイリングのテイストの枠の中で、それを見たユーザーの方がどう感じるかを大事にしています。

ftn編集部:確かに小山田さんのスタイリングはどんな人でも取り入れやすそうで、〇〇系とカテゴライズされないイメージがあります。

小山田さん:自分自身も、なんでも着てみたいと思うので、テイストやカテゴリーにとらわれず、品の良さ・身体を美しく見せることがポイントだと思います。

ftn編集部:書籍「身の丈にあった服で美人になる」では、コスパブランドを使って美人に見える着こなしを提案していますよね。

小山田さん:コスパ服を高見せさせるのはスタイリスト冥利につきますね。私自身、学生時代に古着屋さんで300円のTシャツを買って、このTシャツをどうおしゃれに見せれるかを考えて着こなすことが楽しかったので。ブランドや価格よりも、どう着たら素敵に見えるかのほうが大事ですね。

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ftn編集部:小山田さんは最近はブランドディレクションのお仕事もしてますよね

小山田さん:スタイリストアシスタントになる前の、職人気質なデニムデザインの仕事からファッション業界のキャリアがスタートしているので、モノづくりとなるとさらっと力を抜いてディレクションできないんです。なので主にはブランド立ち上げのスタートアップだけ携わるようにしています。着る人のためにも徹底的に妥協したくない。やるなら全力で。そして、アパレル企業の人と結構ぶつかっちゃうので、長期戦のディレクションは私には向いてないです(笑)

以前ディレクションを担当していた「Ezick(エジック)」では、デザイナーとぶつかることもありましたが、スタイルが良く見える丈にこだわったり、スタイリングするときの譲れない部分があったり、情熱を込めて、ある意味たくさん議論をぶつけてできた服ほど、よく売れたんですよね。やっぱり仕事の熱量、本気って、伝わるのだと確信しました。

ディレクション業をやることで、モノづくりはもちろん、お店を出すときの内装や、どう販売するかなど、アパレル業界の仕組みを知れたこともとても勉強になりました。

身の回りを整理して、ノイズをクリアにしていくことで、自分の軸が明確になった。

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ftn編集部:小山田さんは今年スタイリスト10周年とか。本当に順風満帆にお仕事をされてきていますね!

小山田さん:そのように見えてるだけですよ~。10年間、仕事もたくさん頂き、いろいろな媒体にもお世話になり、順風満帆に見えていたかもしれませんが、立ち止まって考えることも多かったです。

今年10月末に3冊目の書籍を出版させて頂くのですが、その時の様々な体験に基づいた内容です。今回はクローゼットのお片付けに特化した本です。(『稼働率100%クローゼットの作り方』講談社から10月29日発売予定)

本当に良いと思うものを、自分の言葉で、伝えていきたい。

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ftn編集部:10年目で新しいチャレンジは考えていますか?

小山田さん:実は、オンラインサロンを立ち上げました!

本当にいいと思うものを、自分の言葉で伝えて、おしゃれの力で女性を元気にしていきたいと思ってます。

ずっとSNSで発信してきたのですが、大事にしているものを多くの方に発信できる一方で、簡単に否定されたり壊されたりしてしまう面もあって。SNSだと誤解されたり、思った通りの本音が言いにくくなったりもするので、サロンメンバーとは定期的にライブ配信をしたり、機会があればオフ会で実際にお会いしたり、ゆくゆくはみんなで作りたい服を作ったりしてしっかり交流していきたいです。

ftn編集部:プライベートではどんなことに興味がありますか?

小山田さん:ファッション以外だと、お部屋のインテリアや片付けに興味があります。子供と一緒に片付けをしたり、休みの日は公園とセットで家具や電気メーカーのショールームに行ったりしています。日に日に大きくなる子どもたちの成長も楽しみです。

ftn編集部:最後に・・・小山田さんが注目している21AWのアイテムやカラーがあったら教えてください。

小山田さん:注目カラーはマスタードイエロー、アシッドイエロー、ライラック系パープルですかね。アイテムでいうと、エコレザーのアイテムは注目してます。ハードになりすぎないエコレザーは取り入れやすいのでおすすめです。

▶小山田早織(おやまだ さおり)

数々の人気ファッション誌や広告、ショーのスタイリングを手がける。モデル、タレント、女優、アーティストからの指名も多数。その他、ブランドのディレクションやコンサルティングも手掛けるなどその活動は多岐にわたり、自身のSNSや日本テレビ「ヒルナンデス!」への出演で人気を博す。著書に「身の丈に合った服で美人になる」「もう通勤服に悩まない」(ともに講談社)がある。

編集後記:飾らず、まっすぐにお話をしてくれる小山田さんは、親近感が湧き、多くの人から支持される理由のひとつだと思いました。また、スピード感と有言実行力は、働く女性の憧れであり、成功をつかむための一つの理由なのかもしれない。スタイリングはもちろん、オンラインサロンや新しく出版される著書を通して、また美人な女性をたくさん生み出してくれるでしょう。
▶取材:Moe
アパレルメーカーでPR・マーケティングを担う傍ら、ライターとしても活動。興味関心はヘルスケア。おしゃべり大好き、夢はスナック経営。

▶写真:Atsushi Kimura