普段は読者のみなさまが大好きなプチプラ上質ブランドの着こなしや耳より情報を中心にお届けしているエディター沖島ですが、なんせファッションエディター歴16年めと、この業界にソコソコ長くおりますので、値段とか関係なくどうしても身に着けたい・いや着けるべきコンセプトや使命感でもって服や小物を世に送り出しつつ、キャラクターも素晴らしいナイスなデザイナーやクリエイターをたくさん知っています。そんな“奇跡の人々”のクリエイションやプロジェクトを定期的にご紹介する活動を始めます! 記念すべき第1回めは、現在、代官山 蔦屋書店にて企画展『me with someone. by tsukasa kudo(kudos/soduk)』を開催中の工藤 司(くどう・つかさ)さんをクローズアップ。

エディター沖島が工藤さん“推し”な理由

① 服づくりとファッションビジネスの基礎知識・体力・技術がしっかりしている

代官山 蔦屋書店にて企画展『me with someone. by tsukasa kudo(kudos/soduk)』会場全景

出典:fashion trend news

デザイナーの工藤さんは、早稲田大学を卒業後、世界中のファッションエリート予備軍が集うベルギーのアントワープ王立芸術アカデミーに進学し、中途退学して渡仏。『ジャックムス(JACQUEMUS)』、『ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)』でデザインアシスタント、『ワイプロジェクト(Y/PROJECT)』でパターンアシスタントとして服づくりとファッションビジネスのキャリアを積み、2017年に帰国。2017-18秋冬シーズンに自らのブランド『クードス(kudos)』を、2018-19秋冬シーズンに『スドーク(soduk)』を立ち上げます。

アントワープ王立芸術アカデミーは、英ロンドンのセントラル・セント・マーティンズ、米NYのパーソンズ・スクール・オブ・デザインと並んで“世界3大服飾・芸術系専門学校”といわれています。ドリス・ヴァン・ノッテン、マルタン・マルジェラ、アン・ドゥメルムステールなどもここで学びました。エリート校で基礎体力・知力・技術とグローバルで豊富な人脈を得て、人気ブランドのビジネスの現場で実績を積んでいる工藤さんは最強ですし、基本がしっかりしている彼の服はとても信頼できるというわけです。

② 工藤さんと話していると、ジェンダーとか年齢とかどうでもよくなって気分がいい

左が『スドーク(soduk)』、右が『クードス(kudos)』のラック。書店なのに服やバッグが購入できる斬新な展覧会

出典:fashion trend news

工藤さんと彼が作る服の最大の魅力は、彼の服づくりのコンセプトを聞けば聞くほど「ジェンダーとか年齢とか関係なく、自分が着たければ着りゃイイじゃーん!」とポジティブムードになるところ。『クードス(kudos)』はメンズ、『スドーク(soduk)』はウィメンズと一応カテゴライズはされていますが、どちらにも“どちらかといえば(サイズ的にメンズかなー、またはウィメンズかなー)”といったゆるやかな概念。「男性が着たら男の服だし、女性が着たら女の服くらいでいい。ってか着た瞬間に“その人の服”になりますよね。どれでも好きなものを着ちゃえばイイんですよ」といつもそばでニコニコしてくれるので、安心感極まりないのです。ちなみにもうお気づきの読者もいらっしゃると思いますが、『kudos』を反転すると『soduk』、2つのコレクションは表裏一体の鏡合わせ、絶妙な相関関係にあります。

2TONE DENIM PANTS¥30,800/クードス

出典:fashion trend news

パリから帰国後、工藤さんは先に『クードス(kudos)』から立ち上げますが、彼は服の上でさまざまな“実験”を試みています。たとえば、写真(↑)のデニム「2TONE DENIM PANTS」は、一見スタンダードなストレートシルエットですが、すねから裾部分にかけてのパーツをデニム地の裏地で切り替えることで、まるで極端に長くロールアップしているようなデザインに。ほかにも“表でも裏でもどちらでも着られるワークシャツ”や、“どこから首を出そうが腕を出そうがなんとなくサマになるTシャツ”、“ボタンをあえて掛け違えることでめちゃくちゃおしゃれに見えるシャツ”など、ベーシックウェアにさまざまなアイディアを加えることで唯一無二の世界観を生み出しています。そしてまたそれを彼自身が「やっちゃえ♡」と楽しんでいるところが大変よい◎。作り手のポジティブなマインドはそのまま服に投影されるので、身にまとうユーザーも実に愉快な気分になれるのです。

one long knit top¥27,500/soduk

出典:fashion trend news

かたや『スドーク(soduk)』も、左右アシンメトリーなデザイン、異素材切り替えパターン、肌やインナーが垣間のぞくスリットやホールなどの実験的なディテールを擁しながら、素材や着心地、体のきれいな見え方などにこだわったワードローブを展開。女性はもちろん、細身なシルエットや身につけやすいデザインが好きな男性にも多くファンを抱えています。

③ スタイリストでもあり、フォトグラファーでもある多才っぷり

工藤さんが撮影したアーティストの花代さんとのコラボレーション作品集『あい ういる おるうえいず びい ひあ by Hanayo & Tsukasa Kudo』

出典:fashion trend news

ファッションブランドはだいたい、春夏・秋冬と、1年に2回シーズンを分けて季節に合わせたワードローブコレクションを展開し、コンセプトに合わせたイメージビジュアルを作りますが、工藤さんはスタイリングから撮影までも自分で手がけていて、それがまた爆イケなのです! モデルのキャスティング、撮影のロケーション、ストーリー、フィルムで撮影するビジュアルのムードetc.、すべてが「天才なんか……!?」驚愕するおしゃれっぷり。開催中の代官山 蔦屋書店の展覧会では『クードス(kudos)』の記念すべき希少な1stコレクションを自ら撮り下ろしたビジュアルを含む『tomorrow's kids』、そしてフォトグラファーとして挑んだ初の作品集『あい ういる おるうえいず びい ひあ by Hanayo & Tsukasa Kudo』が展示・販売されています。いずれもずっと手もとに置いて、温もりがほしいときに目を癒したくなる不思議な魅力が詰まっています。

クリエイティブな工藤さんだから、いろんなメディアからラブコールがやってくる

出典:fashion trend news

服のデザインからビジュアル撮影をして発信するまでひととおりできるスーパークリエイター工藤さんですが、「自分の作った服を、ほかのクリエイターがどう切り取って表現するのか、むしょうに見てみたくなることがあります」(本人談)とのことで実現したのが、英ロンドン発のカリスマティックなカルチャーマガジン『DAZED & CONFUSED KOREA』とコラボしたエディトリアル・ストーリー“HOPE”。荒廃した地球を舞台に、辛苦のなかでも愛と希望を胸に秘めて生き抜こうとする男女の姿をとらえながら、『クードス(kudos)』と『スドーク(soduk)』の2021秋冬コレクションにフォーカスしています。掲載誌はもちろん購入できます!

ビジュアル撮影 : Kei Matsuura (STUDIO UNI)

出典:fashion trend news

また、東京をベースにファッション&カルチャーを発信するクリエイティヴプラットフォーム『QUI』とのプロジェクト“before the sunset – kudos”の撮り下ろしビジュアルやムービー、さらにジュエリーデザイナー・奥田浩太さんが手がけ、実際に撮影に使用した貴重なアートピースも展示されています。こちらは『QUI』のオフィシャルウェブサイトでもチェックできますし、さらにモデルの美少年たちが着たアイテムを購入もできますよ。

以上、エディター沖島の“推し”ブランド、『クードス(kudos)』『スドーク(soduk)』、そしてデザイナー工藤 司さんのユニークな展覧会についてご紹介しました。ジェンダーレスなコンセプトを軸にクリエイションに励んでいる点で実にモダンです。ぜひご一緒にtsukasakudoワールドを楽しみましょう!

『me with someone. by tsukasa kudo(kudos/soduk)』
開催日時/開催中〜9月20日(月・祝)9:00~21:00
会場/代官山 蔦屋書店2号館1階 ギャラリースペース
住所/東京都渋谷区猿楽町17-5

『meet you up here.』
開催日時/開催中~9月22日(水)9:00~21:00
会場/中目黒 蔦屋書店
住所/東京都目黒区上目黒 1-22-10

Senior Writer:沖島麻美